説明文、親が解いて「これはムリだ」と思った日
説明文も同様です。吉祥の説明文。これは正直言って、つまりません。
私は中高と国語王を自負していましたし、現在も活字中毒の方だと思います。しかし、吉祥の国語の先生とはどうにも趣味が合わないようです。
28年度第一回で出題された説明文は田中優子氏の『布の力』でした。「手仕事」について書かれたもののようですが、その構成は若干複雑です。
出題分冒頭は「じりじりと日差しの強い夏の日、義郎は汗を拭きながら寺に向かって歩いていた」で始まります。
はじめは物語文かと思います。昔の設定っぽいけれど、これならまだいけそうだ、思うわけです。しかし、違うのです。これは著者である私が、義郎へのインタビューをもとに回想風にまとめたものです。
義郎の物語が800字ほど続いたあと、主語は著者である私に変わり、論説文であることが判明いたします。この展開の唐突さに何割かは脱落するでしょう。
主語が変わったことを流し、そのまま義郎ベースで読み進めようものならば、もうわやです。5点くらいしか取れなくなる可能性もありそうです
論説文への転換に気づいたとしてもこの先は「夏の日に汗ふく義郎」ほど単純な話ではありません。
以降、4000から5000字に渡り、易々とイメージしがたい文面が連なります。
「機械漉き和紙と手漉き和紙の併存」「手仕事とは自然力を征服することではなくて、自然の偶然性に身をゆだねること」 「単純で飾り気のない品物が、審美的にみてもっともよいものである、というヴェブレンの理論」「不自由な芸術」「自然と人間の一対一の関係の中で営まれる手仕事は崩壊」
あなた、読みながら「自然と人間の一対一の関係の中で営まれる手仕事」をイメージしましたか? してないでしょう? する気が起きなかったでしょう?
私が最初に解いた国語の過去問はこの回だったのですが、「これはムリであろう」と思いました。「わが子の得意科目は国語、偏差値43を取ったこともあるけれど本当は得意な国語、しかし、これはムリじゃろう」と。
実際、6年9月に解いてわが子の点数は100点満点中44点でした。大問2にあたるこの論説文ではわずか11点しか取れませんでした。
そう、見事に崩壊しましたよ。
この回の物語文は『路傍の石』で合格者最低点は59.5点、合格者平均点は65.1点。
吉祥の国語は平均点7割越えがほとんどですから、この数年でもっともむつかしい回が28年度第一回だったと言えます。調べてみたところ、これ以上に読解しづらい問題はそうそう出ていないのです。
国語の過去問は繰り返しに意味はないとはいいますが、28年度の第一回は繰り返す意味のある回ではないかとも感じます。
少なくとも、このイメージし難い説明文を繰り返し読み込むだけで一定の力はつくのではないでしょうか??
本文は難しく、設問は易しい吉祥国語
以上のように、吉祥の説明文は小学生がイメージしやすいものは、ほぼ出てきません(そもそも中学受験の国語は小学生向けといえないものが殆どなのですが)。
けれど、その実、設問自体は比較的平易なのでした。塾の模試や合不合の国語より、吉祥国語はずっと解きやすいのです。
特に選択問題。
先の『路傍の石』などがそうでしたが「道徳を問うている?」というのか、こう言っては怒られそうですが、本文を読まずとも常識で選べる選択肢が時々出てきます。
吉祥は選択肢そのものがまた長く、四択の合計が400字くらいに渡ることもザラ。しかし、この活字攻撃にひるむことなく読み進めると、拍子抜けするくらい単純で国語が苦手だとしても間違えようがないものも多いのです。
ハンドレッド先生のおっしゃる通り。どうにも選び難い二択が残ってしまったのなら直感で解き、あとは先に進むのが得策だと思います。
なお、記述が苦手な方への朗報として、吉祥の場合、記述がほとんど出来ずともギリギリ合格者最低点に入り込むことが可能な点数設定です。
抜き出し問題は「●●字以内の文章を抜き出し、最初と最後の5文字を書け」など、だいたいパターンも決まっていて、数をこなせば勘もさえてくる仕組み(?)。
指示語の問題なども傍線部から「何段落も離れたところにあった(泣)!!」などというイジワルをする学校ではなく、むしろ傍線部付近だったりで見つけやすいはずなのです。
一方、注意したいのが、本文を読み終わるやいなや、問1から時間の掛かりそうな記述問題を問われた場合。オーソドックスな吉祥パターンでは問一は語句などの記号問題です。
が、時々、気まぐれにこの問1で記述が入ってきたりします。
いきなり3つの書き出し(28年度第二回など)を要求され、狼狽しようものならば先行きは暗いですよ。「時間が掛かりそうならば、さっさと飛ばす」、これは吉祥国語に限らず、入試の鉄則となりましょう。
最良の国語対策は一にも二にも過去問読み
吉祥の国語は文章そのものが長いです。わかりづらい上に長いのです。
2月1日、極度の緊張状態にある小学生なら、本文の長さとわかりにくさで簡単にパニックになってしまうことが想定できるでしょう。
しかし、続く問題文の易しさを鑑みると、パニックになっても落ち着きさえすれば解けるのです。
入試問題から見える学校からのメッセージは「難しいと思ってもパニックにならず、あきらめないこと。落ち着いて考えれば打開策が見えるものです」といったところでしょうか。
ちょっと意味わからないんですけど、前半のみハンドレッド先生のおっしゃる通りでしょう。
では、冷静にね、とはいかないのが小学生です。「うちはちょっとでも解けないとすぐパニックになる、テキストを放りだす、勉強大きらいとわめきだす!!」なんて声が聞こえてきそうですよ。
ならば、どうしたものか???うちはどうしたのか??
繰り返しになりますが、最良の国語対策は一にも二にも過去問読みに尽きるのではないかと思います。面白くない説明文をがまんして読む。何を言っているか理解できるまで読む。いや理解できなくても読む。何度も何度も読む。修行だと思って励みましょう。
設問を解かずに問題文を読むだけなら4年生からでもできます。その時点からやっていたら、ものすごいことになりそうです。
そうですか。今の今、私は6年7月のつもりでいましたが、パソコンの前にいるあなたの世界が何月であろうと安心してください。
なぜなら、お子さんは既にそれなりの読解問題を解いてきたはずなのです。寝る前に5分でも音読させるか、親子で読み合いましょう。音読させる理由は、読み飛ばしを避けるためです。
親だって読み飛ばしたくなるわけですから、子がやらないわけはないでしょう。
ここは子を信じる、信じない以前の問題で、絶対に完遂させるシステムを作りましょう。
ひと月とは言わず半月でも三週間でも続けられれば御の字です。だんだんと吉祥国語に対する肌感覚はつかめてくると思います。吉祥の入試問題は本文を読み込めば、7割は確実に解けます!!
- 対策は過去問読みにはじまり、過去問読みに終わる
- 古めの時代設定の物語文が好き
- 本文は長く、説明文は難解。しかし、問題は易しめ
- 選択肢は常識で選べるものもある
- 記述が苦手でも受験者最低点は可能