子どもの勉強を見るとムカムカしてくる話でも触れましたが、わが子は「同じ問題を永遠に間違え続ける現象」をたびたび起こしました。特に2回連続で間違えた問題は何度復習しても、また間違えました。
それが、あまりにもひどいので学習障害を疑いたくもなりましたよ。
しかし、どうやら、この手の子どもはそう珍しくもないらしいのです。親のムカムカの直因ともなる同現象について、考えてみることにしました。
11か月間できなかったくせに「放置したらいつの間にかできるようになっていた!」現象についても。
エビングハウスの忘却曲線とは
エビングハウスの忘却曲線というもの、塾などから聞いたことがある方は多かろうと思います。
覚えたことを人間が「いかにさっさと忘れてしまうか」、時間の経過と忘却とをグラフ化したものですね。
これをベースとした復習方法は単純な暗記モノに留まらず、近年、受験業界の定石となっていますね。
覚えたことを忘れないためにはまず、「今日のうちに復習する」。
そうして、「翌日にもう一度復習する」。
「その一週間後にまた復習する」。
そうして、「一か月後にまた復習する」。
期間をおいて、計4度の反復が大切。
おっしゃる通りのハンドレッド先生。しかし、おっしゃる通りとは言えないエビングハウスの忘却曲線。いえ、正確にはその復習方法を提唱した人でしょうか。
反復は確かに大事です。
けれど、中学受験の現実ときや、反復しても、反復しても、ダメなことも多いとは思いませんか?
たった4度の反復で成績が安定するならば、受験生もその親も苦労はないと思うのです。
昨日できた問題が今日になったら、またできない
6年の春以降、わが子の塾では早々に入試演習に入りました。
その中に、第一志望である吉祥女子の過去問もありました。大問の一部ですが、早々にやらされたことに不満も感じましたよ。本格的に解く際に、初見ではなくなるわけですからね。
が、もっと不満に感じたのは、5年生でも解ける問1以外、5問中4問が不正解であったことです。
おっしゃる通りのハンドレッド。とりあえず、直しだけはしっかり行うことにしました。
エビングハウスの法則に則り、その日にうちに復習し、翌日もう一度解かせてね。もちろん、全問正解です。ここまでは問題ございません。
その次は一週間後と言わず、5日後に反復しました。一週間では間が空き過ぎると思ったためですが、またしても、最初の1問しか解けませんでした。
その2日後にもう一度解きました。この時は全問正解です。さすがに答えを覚えていたのかもしれません。
それから1週間して再チャレンジしました。
また、最初の1問しか解けませんでした。
3日ほどしてまた解きました。今度は全問正解でした。
翌日、また、解きました。
また、1問しか解けませんでした。
ここでは私がいかにムカムカしていたか、どんなにか地獄の使者気分だったかは省きましょう。
その後も数週間に一回くらいの頻度で同じ過去問の問題を解き続けました。スマホ前のあなたが思う通り、なんだかもうヤケクソです。そこまでして解き続ける意味はないってものです。
ともあれ、夏の終わり。
「わかった!わかってきた!」
非常にいまさら感のある言葉を子どもが口にしました。
さて、6年10月。いよいよ、その問題の入った過去問を解く日がやってきました。既に十何回と繰り返していますから正解は当然。その大問は丸々点数を引くつもりでしたよ。
が。
またしても、最初の1問しか解けませんでした。
そんな融通の利かない法則などいりません。とにかく、わが子はその程度の反復では足りなかったということです。
いえ、正確にいえば反復の回数が問題なのではなく。
3回の反復でマスターできるようなものは、そもそも1回の反復で足りるのです。
ひるがえって、1回目、2回目と連続して間違えた問題は4回どころか40回やっても間違えるということです。
結局、そういうことでしょうが、親としては一つ一つ丁寧に確認しながら一緒に解き直してきたつもりなのです。
この現実はエビングハウス好きな塾の先生にはなかなか理解しがたいでしょう。
「やっても、やっても点が取れない」保護者の悩みとどんどん乖離が生じるでしょう。
「繰り返し練習しましょう」なんて無意味なアドバイスを受け、家路につく羽目になるわけです。
ハンドレッド先生のおっしゃる通りでしょう。
永遠に間違い続ける現象の、その要因は今もってわかりかねます。しかし、愚痴だけで終わってはウカルにつなげられません。当時を振り返り、問題点を考えていきたいと思います。
「常に解けない」より「解けたり、解けなかったり」の方がなお悪い!?
子の勉強を見るとムカムカの項でも書きましたが、4年生の頃、還元算(逆算)を11か月くらい解き続けたことがありました。
計算ですからそれほど時間はかかりません。多い日は一日10問、少ない日は1、2問。第一志望の吉祥女子では頻出ゆえ、早めに仕上げてしまおうと考えたわけです。
しかし、娘はよく間違えました。正答率は4問中2問、悪い時は1問とか。
逆算のルールが定着していないのでしょう。ホワイトボードで何度も何度も説明し、自前の逆算ルールカードを作成しました。
「もし、ルールを忘れたら小さな数で試しなさい」、繰り返し言って4年の夏には整数の還元算、小数の還元算は取れるようになっていました。
が、分数の還元算はいつまで経ってもできません。
進学塾では4年で習う分数の割り算ですが、多くの小学生の鬼門です。割り算なのにひっくり返して掛け算をする。
一方の還元算、移項すると割り算は掛け算になる。掛け算にはなりますが分数をひっくり返してはならない。子はやがて、混乱するでしょう。書いている私も混乱し、読んでいるあなたも混乱するでしょう。
まずは分数の割り算を完璧にすること。導き出されたのは素人でもわかる判断です。しかし、完璧にしたつもりが還元算になるとまた間違える。ひっくり返す必要のないところで分数をひっくり返したりするのです。
しかも、常にではないのです。
気まぐれにひっくり返したり、ひっくり返さなかったりするのです。
算数の成績が芳しくない子というのは、このように気まぐれに問題を解くのです。
そこにセオリーはないのです。
気まぐれが合っていて、たまには満点も取ります。
たとえば、ある時、塾の模試で成績優秀者一覧に乗りました。正答率20%程度の還元算が解けていたおかげでした。
が、この正答こそたちが悪い。
みんなが解けない問題を解けた!「当然クリアー!自分ジーニアス!」と思うはずです。
未だ苦手と誰が想像するのでしょうか。
塾の先生にも「還元算ができない」というと、首をかしげられたくらいですからね。
子の方は「わたし天才」くらいな顔をして、そうこうするうち事態はどんどん悪化する。満点取ったと思えば、ある日の点数は半分以下。
気まぐれなルールで問題を解く者はどれだけ量をこなそうと本質的な力などつかないのです。
あまりの出来なさに還元算を放置した母、その結果は……!?
「ルールを整理してから定着させる、そのプロセスが足りないのでは!?」
あなたはそう思うでしょう。私もそう思ったわけです。
40行くらい前にも書きましたが、そう思った私は「基本ルールをホワイトボードに板書」しそれをノートに取らせ「自前のカードを作成」し、「ルールを忘れたら小さな数で試しなさい」、そんなことを何度も何度も繰り返したわけです。
しかし、定着しないのです。それ以前に授業で習っているはずなのです。いったい全体何が起こっているのでしょう?
考えても答えは出ませんので、「すべてを一旦ナシ!」にして心新た、また説明し直します。
「怒り爆発→一旦リセット」の繰り返し。11か月間で10回くらいはルール定着を試みました。この回数がエビングハウス的にはどうなのかは知る由もございません。
読んでいるあなたも同感でしょう。
この母ときたらド素人丸出しで何をこちゃこちゃやっとるんじゃ!とね。
過去に戻れるなら自分に言いたい。中受専門個別のSS-1にでも相談したら?と。ここは無料でテスト用紙分析してくれるしね。
親も常時見学できるから真っ当な指導方法を見てきなさいよ、と。
あるいは短期OKの学研の家庭教師
ともあれど。
結論から言いますとその後、還元算とは手を切りました。
5年のGWくらいでしたかね。ついに、イヤになってしまったのです。私がね。
こればかりはタイトルに偽りあり、でしょう。
あれほど手こずっていた還元算の割り算も5年の終わりには普通に解けるようになっていました。
できない子なりの「腑落ち」のセオリーがある
さて、ハンドレッド先生。ここから導き出される真理は何でしょうか。
結局、そうなのです。わが子とはいえ他人の「腑落ち」タイミングなど測りかねますからね。
わが子の還元算のように、どこかわからない未来の中で突如理解することもある。
別の単元を学習する中で何かヒントを見つけたのかもしれないし、学習のステージが上がることで簡単になったのかもしれません。
あまりに自然に理解して、できなかったことすら忘れている可能性もありましょう。
それは何とも言えません。
できるようになったのか、できないままだったのか、結局のところ、わからないものもあるわけです。
中学受験からとうに離れた今となっては、また1問しか解けないような気がします。
「わからないものをわからないままにしておく」という勇断
さて、私の出した結論です。
塾の授業中、あるいは最初の復習で理解したもの、出来たものならば反復することで長期記憶となりましょう。
しかし、今日できず、明日できて、明後日には忘れて、その後も出来たり、出来なかったりの繰り返し。
これはおそらく反復のムダです。もうやらなくても結構です。
ただし、ここに母にとって最大の難局が隠れています。
「わからないものを、わからないままにしておく」。勉強の鉄則とはまったく逆のことを言っているわけです。
だからこそ、私は11か月も還元算をやらせ続けたのです。
別の項では「バカすぎてムカムカする」みたいなことを言ってたくせに、なんとまぁ日和見主義な。しかし、当たらずとも遠からずですね。
「二度間違えた問題を永遠に間違える現象」で一番厄介なのは親自身にほかなりません。
「子の勉強を教える親」の最大のデメリットは今すぐなんとかしたくなること。
今日の今日、できないからこそ怒りも沸く。
理解を待つことが出来ないのです。
けれど、画面の前のあなた。パソコンかスマホかタブレット前のあなた。私は出来なかったけれど、あなたならきっと出来ることでしょう。
「何度やっても子の理解が乏しい」のは、塾の授業が悪いのでもない。あなたの子どもが悪いのでもない。ましてや、あなたの説明が悪いのでもない。
ただ、このタイミングではないのです。
ですから、別のことに勉強時間を費やしましょう。すでに「腑落ち」したものを絶対に忘れないようにすること、そちらの方がよほど大事。
いや、しかしどうしても何とかしなくちゃ!って場合は潔くプロに頼みましょう。
あっさりできるようになるか、プロの方が「このタイミングではないですよ」と教えてくれるか、どちらにしても親の心はラクになります。
おまけ:無料教材にお得感ある中学受験のサービス・一覧
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無料テキスト80ページ分。1冊まるまる届くという素晴らしさ(笑)!図形苦手っこは一度取り寄せておいて損はない教材。
●Z会の通信教育 中学受験コース
無料テキスト40ページ分。付属の別紙も情報量がすごい。過去には個別並みに詳しい最難関の過去問分析が届いたことも。
●「ブンブンどりむ」
無料テキスト全学年分。これで国語好きにならない子はいないでしょうというくらい良教材。うちは模試で3位を取れました。
●学研の家庭教師
前述しましたが、パワポで作った感じの「中学受験Q&A」が意外と役に立つ。
「物語文は口調の変化に印つける」「公民は図を書いて覚える」など学習ポイントになるほど!
家庭教師や個別は折々のお得キャンペーン多し。
資料ダウンロードで効果的な学習法がわかる「トライ式性格診断(ハイジのエニアグラム)」だったり中受の出題傾向など(社会なら「〇〇県の施策のメリットを考えよ」なんてものも増えているとか)有益情報も早い。